アパートから飛んだ飛行船
「泉町にある”飛行船”は、静かな住宅地にある。その一角に二階建ての小さなアパートの二部屋を借りて運営している。家賃は七万円。部屋の広さは六畳と台所の1Kだ。足の踏み場もない狭さだ。・・・ドアには小さく”飛行船”と書かれている」
これは2001年夏、ぼくがローカル紙「日刊新民報」に投稿したルポ「飛行船の一日」の記事の部分。当時、市内には4つの精神障害者小規模作業所があった。いずれも家族会や有志が精神障害者の社会復帰を願って、やむにやまれず自力で開設した。飛行船も、そのひとつ。
この飛行船が10周年を迎えた。先日(11/2)、ぼくは「NPOいずみ設立10周年記念のつどい」に出席した。会場の所沢市保健センターには、メンバー(当事者)、家族、ボランティア、来賓などが多数参加した。十年一昔というが、この間、精神障害者の行政施策は大きく前進したといえる。
小規模作業所の飛行船は、1999年9月、「在宅の精神障害回復者に対し作業の場・憩いの場を提供し、生活訓練や仲間づくりなどをとおして、社会的な自立や経済活動への参加ができるよう援助する」ことを目的に開設された。
それ以前、市内には「所沢どんぐりの家」「所沢こぶしの家」の2つの小規模作業所があった。十数年前のことだが、ぼくはこれらの作業所の開設の相談をうけたことがある。
当時は、身体・知的・精神の3障害のなかでも、精神障害者の行政施策は皆無に近かった。ぼくは、「なんとかして政治の光をあてたい」と市議会で毎回のように精神障害者の施策の充実をはかるよう質問をした。
10周年のつどいに参加したOさんは、「精神障害者保健福祉手帳に写真を貼ることができた。それでも身体、知的とくらべるとまだスタッフ・施設の面で格段の差があります。作業所にでかけても、交通費、昼食代を払うと息子の工賃はいくらにも残らない」と訴える。
たしかに精神障害者の福祉施策は他の障害とくらべると遅れている。とはいえ、福祉手帳、自立支援医療(精神通院分)、訓練等給付費、障害年金など法の整備もされてきた。
所沢市の精神保健福祉の仕事も少しずつ充実している。いま「こころの健康講座」「こころの美術展」「家族や障害者本人に対する教室」などの啓発事業、さらに「ソーシャルクラブ」「サロン」なども行なわれている。また民間の施設もいくつか誕生した。
10周年を迎えた飛行船は、2007年4月より地域活動支援センターに、また飛行船2号も翌年10月に支援センターに移行している。さらに「ワークみどり」は、作業をとおして社会参加への準備として、就労支援B型事業所として運営されている。自立支援法の施行で、「NPOいずみ」の法人格も取得した。
記念のつどいでは、パワーポイントによる「10年間の思い出」、またメンバー、家族、ボランティアのみなさんが、感謝の気持ちでごあいさつを行なった。
NPOいずみの稲川代表理事は、座談会のなかで「これからの施設はどうあるべきか? 限られた範囲でやってきたが、24時間体制やグループホームなどもある。将来はNPOが母体では制約があるので、人材の充実、もうひとランクあげて、運営に心がけたい」と語った。
こころの病気は毎年ふえている。現在、所沢市内の精神障害者は7000人(推計)といわれている。精神の福祉手帳所持者は増えているが、まだ1402人(9月末)。ちなみに知的障害者は1466人、身体障害者は7985人(10月末現在)となっている。
10周年を迎えた飛行船は、狭いアパートの一室からスタートした。いまやスタッフは十数人いる。大きく発展をしているようにみえるが、小さなNPO法人での運営、とくに運営資金では頭を痛めているに違いない。
世間ではいまだ精神障害者は怖い、なにをするかわからない、という先入観、誤解・偏見が根強い。しかし、会ってみればおだやかで、おとなしい努力家が多い。どんな障害であろうが、社会の一員として共に暮らす社会、こころのバリアフリーをぜひつくりたいものだ。
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