障害者週間の記念講演
「目をとじて、深呼吸してください」「だれかの声が聞こえませんか?」「聞こえた人は手をあげてください」と、石澤さんは満員の参加者に問いかける。手をあげたのは数人。これは12月1日、所沢市役所で開かれた障害者週間の記念講演会のひとこまだ。
石澤さんは、1998年10月、パソコンをさわっていたとき、「自分の考えていることが、職場の人に聞こえるようになった」と妄想しはじめ、2000年から統合失調症で入院、最後の入院は2年前だったという。「今年1月、結婚しました」と照れる石澤さんは、オリジナル曲をギターライブした。
今年の記念講演は、「一人ひとりが一人じゃないんだ~精神障害者の兄弟姉妹として・ソーシャルワーカーとして」というテーマ。講師は三橋良子さん。主催者の当麻よし子市長のあいさつの後、さっそく講演がはじまった。
講師のお話は、統合失調症のお兄さんとの体験からはじまった。「最初の10年、本人も家族もつらかった。病気の軽さ重さはあるが、兄は人の目が怖いと、バスも自転車にも乗れないひきこもりの状態だった。偏見・差別の根強い社会のなかで、兄は入退院をくりかえした」。
つらい経験を話すことは勇気がいる。「兄に、オレは世界で一番つまらない男。肩身のせまい思いをしていないか」といわれて、返事ができなかった、という。
「兄は奇跡的に作業所に通うようになった。一生入院ではなく、その人らしく暮らすには管理された病院ではむつかしい」。そこで講師の先生は、地域夕食サービスの単身アパートなどの経験、さらに精神障害者をとりまく入院状況を具体的に指摘した。いまなお長期入院が多すぎる、と思う。
ぼくは十数年前、所沢市に精神障害者の社会復帰施設をつくりたいと、関係者から相談をうけたことがある。翌年、東所沢の狭いマンションの一室、6畳2間にオープンしたのが、初めての共同作業所「所沢どんぐりの家」だった。いま所沢市内には、精神障害者の生活支援センターなどが7施設ある。
当時は、身体障害者、知的障害者とくらべ、精神障害者の行政施策、予算は皆無であった。ぼくは「精神障害者に光を与えるのが政治の使命」だと、その後、意識的に市議会でとりあげてきた。
精神障害者への偏見・差別はいまだ根強い。市内の公共施設を利用しての公設民営の動きもあったが、住民の「退院しても怖い、なにをするかわからない」「住宅地を徘徊しないよう、集団通所してほしい」「迷惑施設。地価が下がる」と、誤解、偏見、差別のなかで、やむなく中止した経験もした。総論賛成・各論反対のケースだ。
市内の精神障害者施設はふえたが、どれも財政的に苦しい民間の小規模施設だ。所沢市役所一階に最近、喫茶室「どんぐり」がオープンした。
記念講演会終了後、喫茶室には、たくさんの人が入っていた。社会福祉法人「所沢どんぐりの家」のメンバーさんが働いている。うれしいかぎりだ。障害者週間(12月3日ー9日)がもう必要ない、そんな社会に早くなってほしい、と思う。
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