トトロの原風景はいま
長編アニメ「となりのトトロ」の舞台となった狭山丘陵。この丘陵は、埼玉県と東京都の都県境にある広い丘陵緑地。ぼくの住む山口地区は、いまも起伏のある緑豊かな地域だ。西武ドーム、湖面の美しい狭山湖、雑木林などがある。狭山丘陵の雑木林は春夏秋冬、いろいろな風景をみせてくれる。
昨日、所沢駅東口前のくすのきホールで、「トトロのふるさと財団」が財団設立10周年記念シンポジウムを開いた。
基調講演を行なった安藤聡彦財団理事長(埼玉大学教授)は、「いま狭山丘陵の景観は大きく変化している。相続が発生すると、ミニ開発になり切り売りの状況だ。トトロの森は確実に危機にある。現在、財団は9ヶ所のトトロの森、一軒の古民家を取得している。今後は農地も取得して一体的に保存、復元、活用していきたい。地域にとって丘陵は大事な環境資源だ」と語った。
シンポジウムのパネリストで所沢在住の宮崎駿監督は、「悲鳴をあげているのは狭山丘陵だけではない。無理をせず運動を持続させていこう。自分が正しいと押しつけてはだめ。私は半径300mで活動している」と発言。
来賓の当麻よし子所沢市長は、「所沢は都会と田舎が共存しているまちだ、という新住民もいる。私のマニフェストには、個人市民税の1%を財源に身近な緑や狭山丘陵などの保全にふれている。山口の菩提樹池周辺が埼玉県のエコ・オアシス保全事業の候補地になり、先日も、そこの田んぼの収穫祭に参加した」とあいさつした。
狭山丘陵は首都圏でも貴重な緑がたくさんある。財団が取得した「トトロの森」の何ヶ所かはわが家の近くにある。30年前頃から、丘陵が開発され大きな団地もできた。最近ではトトロの森としゃれたネーミングだが、武蔵野の雑木林だ。地元では森といわず「山」といった。山は人の手が入った二次林。ぼくは子どもの頃を思い出した。
冬になるとクヌギ、コナラを伐採して、風呂や台所の燃料のまきにする。大きな切り株を台にして、まさかり、ナタで割っていく。割り方にもコツがある。まき割りは、子どもの仕事だ。まきは家の軒下に高く積みあげて乾燥させる。
風呂をわかす、台所で煮炊きするにも、燃料の小枝とまきは必需品だった。新聞紙をまるめて、火をつける。子どもながら息を吹きつけまきを燃やす。こんな昔の風景はいまは消えてしまった。
雑木林は燃料だけではない。冬になると、くずはき(落ち葉はき)がある。熊手で落ち葉を集め、大きなかごに入れ、リヤカーで山から家まで運んでいく。庭に床をつくり、落ち葉、水、人糞で堆肥をつくる。このように武蔵野の雑木林は農家の日常生活と密接にかかわってきた。管理された冬の雑木林は実に美しい風景だった。
トトロのふるさと財団は、里山の土地を買い取り、いきもの・文化財の調査・研究、トトロの森の掃除などを行なってきている民間の団体だ。開発がすすむなかで、狭山丘陵に根ざすナショナル・トラスト団体として、いま10年間の長期構想を検討しているという。
シンポジウムには多くの市民が参加した。「人と自然が共生できる所沢」をぜひともつくりたいものだ。
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